知っておきたい廃用症候群とその対策

ウォーキングしているシニア女性と男性

介護をする中で「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」という言葉を耳にすることがあるかもしれません。これは、長期間の安静や活動の低下によって、身体や心の機能が著しく低下する状態を指します。 
運動不足や寝てばかりの状態が続くと起こります。

廃用症候群は、要介護状態を悪化させる大きな要因の一つであり、適切な予防と対策が重要です。
本コラムでは、廃用症候群の原因や症状、予防策についてご紹介します。

もくじ

その前に知っておきたい用語知識

ADL
ADL(Activities of Daily Living、日常生活動作)は日常生活を送る上で基本的な動作を指し、介護や医療の現場でよく使われる言葉です。例えば食事は自分で食べられるか、などのレベルのようなものです。 ADLの状態を知ることで、どの程度の介護が必要なのかが明確になります。

QOL
QOL(Quality of Life、生活の質)はその人がどれだけ充実した生活を送れているかを表す概念です。こちらは聞いたことがある方も多いかもしれません。身体的、精神的な快適さや安心さ、社会とのつながりや、自立の度合いなど総合的に見た幸福度、充実度の指標としてADL、QOLの向上といったような言葉の使い方をし、それがまさに介護の仕事と言ってもいいでしょう。

残存機能の活用
要介護者に出来ることはしてもらうという介護の中でも非常に重要なキーワードです。要介護者の方が、何がどこまで出来るのかを知ることで、介助者の負担も軽減します。また声のかけ方や、環境を整えることで出来ることが増えていく場合もあるので頭の片隅に置いておいてください。

廃用症候群とは?

身体を動かさない状態が続くことで、筋力や関節の機能、さらには心肺機能や精神面にまで影響を及ぼす状態を指します。特に高齢者は、短期間の安静でも急速に進行するため注意が必要です

主な原因

長期間の安静

病気やケガによる入院や寝たきりの状態が続くと、筋肉や関節が使われなくなり、機能が低下します。 

運動不足

自力での移動が難しくなり、車いすや介護用ベッドの使用が増えることで、身体を動かす機会が減少します。 

過剰な介護

家族や介護者が必要以上に手を貸すことで、本人が自分で動く機会を奪われ、結果として身体機能が低下することがあります。

症状

廃用症候群の症状は多岐にわたり、以下のような身体的・精神的な影響が見られます。

筋力低下

1週間の安静で筋力が10~15%低下すると言われています。 

関節拘縮

関節が硬くなり、動かしにくくなる状態です。 

骨粗しょう症

骨密度が低下し、骨折のリスクが高まります。 

心肺機能の低下

呼吸筋の衰えや肺活量の減少が見られます。 

精神的な影響

意欲の低下やうつ状態が進行することがあります。

廃用症候群の悪循環
廃用症候群は、一度発生すると悪循環に陥りやすい特徴があります。例えば、筋力が低下すると動くのが億劫になり、さらに運動量が減少します。その結果、身体機能がさらに低下し、寝たきり状態に近づいてしまいます。

廃用症候群の予防と対策

廃用症候群を防ぐためには、日常生活の中で「動くこと」を意識的に取り入れることが重要です。以下に、家族や介護従事者が実践できる具体的な方法を紹介します。

1. 適度な運動の実践

日常生活動作(ADL)の維持

入浴や食事、トイレなど、本人が自力で行える動作を適度にサポートしながらやってもらうことが大切です。たとえ時間がかかっても、待つ事も重要です。トータルでみたら介護者の負担は大幅に減ります。 
いつもじゃなくて大丈夫です。急ぐ時もあると思います。できる限りそうして、ご自身の力を使ってもらう意識が大切です。

軽い運動の導入

散歩やストレッチ、椅子に座ったままできる体操など、本人の体力に合わせた運動を取り入れましょう。時間がかかっても待つ、とあるその待つことも軽い運動の時間と考えるのも大いにありです。実際にリハビリのメニューに「トイレを使うこと」などが入ることがあります。我々が普段何気なく行なっている日常生活動作も人によってはそれ自体が運動となるということです。

2. 栄養管理

バランスの良い食事
筋肉や骨の維持に必要なタンパク質やカルシウム、ビタミンDを積極的に摂取することが重要です。 
水分補給
脱水症状を防ぐため、適切な水分補給を心がけましょう。

3. 精神的なケア

コミュニケーションの促進
家族や介護者が積極的に話しかけ、本人の意欲を引き出すことが大切です。 
趣味活動の支援
音楽療法や回想療法など、本人が楽しめる活動を取り入れることで、精神的な安定を図ります。

4. 過剰介護の防止

本人の能力を尊重

できることは本人に任せ、必要以上に手を貸さないようにしましょう。 ここで強い口調や態度が出てしまうと、身体に良いことを勧めていても、心にとって悪影響が出てしまいます。気持ちよくご自身の力を使ってもらえるような関わり方が理想的です。

自立支援の意識

介護者は「助けすぎない」ことを意識し、本人の残存機能を活かすサポートを行います。
何を手伝うかというよりは、出来ることを正確に把握し「手伝わなくても良いこと」を意識した関わり方が出来ると理想的です。

残存機能を潜在能力だという方もいます。残された力を扱うというよりは、隠された力を引き出すというような考え方です。
実際、私も潜在能力を引き出すと思って考え対応することが多いです。

5. リハビリテーションの活用

専門家の指導を受ける

理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションを取り入れることで、身体機能の維持・改善が期待できます。 

訪問リハビリの利用

在宅療養中でもリハビリを受けられる訪問サービスを活用しましょう。

家族と介護従事者が連携する重要性

廃用症候群の予防には、家族と介護従事者の連携が欠かせません。家族は日常生活の中で本人の状態を観察し、介護従事者に適切な情報を共有することが重要です。一方で、介護従事者は専門的な知識を活かし、家族に対して具体的なアドバイスを行う役割を担います。 

まとめ

廃用症候群は、高齢者の生活の質を大きく低下させる要因ですが、適切な予防と対策を講じることで、その進行を防ぐことが可能です。家族や介護従事者が協力し、本人の「動く力」を引き出す支援を行うことが、廃用症候群の予防につながります。日々の介護の中で、少しずつでも「動くこと」を意識し、心も身体も元気になれる取り組みを続けていきましょう。 

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この記事を書いた人

介護職歴約15年、現在は特養非常勤、専門学校講師、旅介(たびすけ)営業企画パートナー、スケッター公認アンバサダー、などなど介護業界がよりよくなるよう様々な活動をしている。

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