ケアマネに頼らず利用者本人や家族で作成する「セルフケアプラン」について、始めるまでによくある悩みや質問についてお答えしています。
ケアマネに依頼しないと介護サービスを使用できないのですか?「セルフケアプラン=ケアプランの自己作成」って聞いたのですが何ですか?
介護保険を利用して介護サービスを利用する場合、本人の心身の状況、生活環境、希望等を考慮して、利用するサービスの種類や内容をあらかじめ計画し、「ケアプラン(居宅サービス計画)」を作成し、「サービス担当者会議」を開く必要があります(「必要な介護サービスはどうやって決まっていくの?」で説明)
ケアプランはケアマネだけでなく、利用者本人や家族が作成することも可能で、これを「セルフケアプラン(ケアプランの自己作成)」といいます。
セルフケアプランは、本人や家族が介護保険の制度を理解して自ら計画を立て、自身が作成するケアプランに責任を負えることを前提として行います。
ケアマネにケアプラン作成を依頼する場合と比較して、自分の希望するサービスを自由にプランに反映することが可能で、ケアマネを入れた場合と比べてケアマネの定期面談、モニタリング等が不要になります。
一方で、情報収集や煩雑な事務手続きを自分で行うことになる他、ケアマネジャーの専門性を欠いたプランになる可能性があるため、注意が必要です。
平成21年度に行われたアンケート調査では、下記のようなメリット、デメリットが報告されています。
ケアプランを自己作成するメリット
保険者が考える自己作成のメリット
- 本人・家族が制度や自分のサービス内容を理解できる
- 本人・家族がサービス提供事業者とじかに連絡調整をすることで、事業者のレベルアップにつながる。また、事業者は顧客に対する意識付けになる
- 要支援者などは自立支援という理念に合っている
- 本人・家族が納得できるサービスを選択することができる
- 行政と利用者のコミュニケーションが増す
- 給付費の削減につながる
利用者・家族が考える自己作成のメリット
- サービス提供者、行政等関係者とのコミュニケーションがよくなる
- 自己作成を通じて、介護保険制度への理解が深まる
- 家族間での意思疎通が活発になった
- 本人・介護者が前向きになった
- 自己作成を行いながら家族を看取った介護者に納得感が残る
- 事務的な負担感はほとんどの人が感じていない
ケアプランを自己作成するデメリット
保険者が考える自己作成のデメリット
- 行政でどこまで支援できるか、行政のスキルについて
- 制度改正時などの情報提供、フォローがきちんとできるか
- 給付の適正の担保をどうするか。
- わがまま勝手にするための自己作成だと困る
- ケアマネジャーに丸投げをする感覚で、行政に丸投げをされると困る
- サービス提供事業者に誘導されて自己作成にいたるケースがあるが、囲い込みにつながる可能性がある
利用者・家族が考える自己作成のメリット
- 情報不足(制度改正、事業者、認定過程など)。分かりやすい情報提供を求めたい
- 「ケアプランの内容はこれでいいのか、作成はこのやり方でいいのか?」という不安がある
- 相談できるところがない
- 自己作成が一般にほとんど周知されていない
詳しくはこちらの記事で解説!
ケアマネに依頼した方が楽なのに、なぜ「ケアプランの自己作成」を選択するの?
2024年時点では、「介護保険を利用するにはケアマネに相談する」というのが、「当たり前」。「ケアプランを自己作成したい」と考える方は同じ市区町村でも数人いるかいないかという稀な状況です。
それもそのはずで、利用者がケアマネにケアプラン作成を依頼しても作成に係る費用はかかりませんし、自己作成にあたっての時間や手間もかかります。ケアプランの自己作成を選択された理由はどのような背景があるのでしょうか?
平成21年度に行われたアンケート調査では、下記のような理由があげられています。
- ケアマネジャーとのトラブル、ケアマネジャーへの不信感
- 長い間介護をしてきており、介護保険以前にもマネジメントを行ってきた
- 身内らしい良い暮らしのため
- 介護保険の理念に合っていると感じるため
体験談を下記に記載します。
「セルフケアプラン」はどうやって作成するのですか?
セルフケアプラン作成にあたっては、下記の流れで作成します。
- 市区町村の介護保険課でケアプランを自己作成する旨を届け出て提出書類をもらいます。
- 必要なサービス事業者などの情報を集めてケアプランの原案を作成する(各サービスの利用単位数と自己負担額の計算を含む)
- 関係者を集めてサービス担当者会議を開いてケアプランを完成させます
- 市区町村にケアプランを提出して受付印をもらい、各サービス提供事業者に必要な書類を送付して介護サービスを開始してもらいます
- サービス利用期間中はサービス提供事業者と直接連絡調整を行い、毎月サービス利用実績をまとめて市区町村に提出します
「セルフケアプラン(ケアプランの自己作成)」の情報がなく、市区町村で相談したのですが、推奨しませんと言われてしまいました。
自己作成をされた方の話では、市区町村に相談すると、「ケアマネをつけてください」、「私達は自己作成を推奨していません」、「無料なのになぜケアマネに依頼しないのですか?」と冷たい対応をされてしまった。という声も聞かれます。
このような背景には、市区町村の担当者が、①制度の理解が不十分で自己作成ケアプランの仕組みを知らない、②制度の仕組みは知っているが、本人が作成して届け出た居宅サービス計画の介護報酬コードや指定事業所番号などの記載内容をチェックして国民健康保険連合会に給付管理表を送付する事務処理が大変、といった理由があるかもしれません。
平成21年度に行われたアンケート調査では、行政側が考える下記のような理由があげられています。
- 利用者の制度理解向上
- 介護予防効果
- 利用者の満足度向上
- 個別性重視のケアプラン
- 居宅介護支援費の削減
- 利用者の手続き忘れ等、事務的な不備
- 行政の事務負担
- 利用者の負担
- わがままなサービス利用
- ケアマネジャーを否定するものでは?
- 行政に分からないことが多い
- ケアプランチェックはどうするか
自己作成のメリットよりも心配のほうが大きい
- 積極的に周知していない
- 自己作成希望者が訪れるという想定をしていない(していなかった)
- 自己作成希望者が来たときの支援の準備が十分でない
- 自己作成は認められているのか?という認識不足の保険者もある
- 自己作成実績を持つ保険者は50%以上
- しかし、平成21年7月現在、自己作成をしている利用者は1%に満たない
- 自己作成の普及には消極的な行政が約60%を占める
「セルフケアプラン(ケアプランの自己作成)」について、まとまった資料はありませんか?
それでもケアプランは自分で作りたい。どんな書類を用意すればよいの?
書類作成をするにあたって、介護サービスはどのような流れで請求・給付されるのかを理解する必要があります。
ケアマネがいる場合
例えば、Aさん(1割負担)が、8月に、Bという会社(介護サービス事業者)から提供される介護サービスを10,000円分利用した場合はどうなるでしょうか?
- ケアマネは、「AさんがB会社のサービスが必要である」というケアプランを作成し、ケアマネ、Aさん、B会社の担当者と共にサービス担当者会議を行います。ケアプランは、居宅サービス計画書という書類にまとめ、サービス担当者会議の記録を書類に残します。
- サービスの開始までに、ケアマネは、サービスの利用予定がわかる書類(サービス利用票)を作成し、B会社に送ります。
- B会社は、ケアマネから送られたサービス利用票の通り、Aさんに8月のサービスを提供します。
- 8月末~9月はじめに、B会社はサービスを提供したことを確認できる書類(サービス提供票)を作成し、ケアマネに送付します。
- 同時に、B会社はAさんに1,000円を請求し、残りの9,000円は翌月(9月)の10日までに国保連(国民健康保険団体連合会)という組織に請求します。
- ケアマネは、サービス利用票・提供票を確認し、給付管理表(「AさんがB会社の介護サービスを月に○回利用して、○円分利用しました。自己負担額は1000円なので、B会社に9000円を支払ってください」ということがまとめられた書類)を作成し、国保連に直接送付します(9月の10日まで)。
- 国保連は、B会社からの請求内容と、ケアマネから送付された給付管理表に解離がないかを確認し、間違えがなければ、請求された月の翌月末(10月末)にB会社に9,000円が支払われます。
セルフケアプランの場合
セルフケアプランは、ケアマネがいる場合と異なり、①~④は利用者もしくは家族が行い、⑥給付管理表の作成、国保連への送付を市区町村の介護保険課に依頼する形となります。
このため自己作成する場合には、介護保険課に自己作成する旨の届け出が必要となるのです。
よって、給付に必要な書類は、居宅介護サービス計画作成依頼届出書、居宅サービス計画書(ケアプラン)、サービス担当者会議の記録、サービス利用票(提供票)となります。