介護をもっと豊かにするコミュニケーション

介護職とご婦人が寄り添っているイラスト

介護スタッフ「〇〇さんーんお風呂ですよー」

おじいさん「嫌だ!入らない!」

介護現場ではよく見られる場面です。
どんなに誘っても絶対にお風呂に入ってくれない方がいたりします。

お風呂に限らずですが、相手にとって良かれと思ってこちらは声をかけますが、時には怒らせてしまったり、時には悲しませてしまったりと、お互いにネガティブな感情になってしまう結果に・・・といったようなシーンはよくありますよね。

ところが先ほどのような、おじいさんがお風呂に入ってくれることもあります。

実際にあった例

「お風呂ですよー」ではなく「ちょっと来てもらえませんか?」かける言葉を換えただけで、毎回お風呂に入ってもらえるようになったことがあります。

たったそれだけのことで、浴後、おじいさんも誘った人も笑顔です。

コミュニケーション一つで笑顔になれたり、少し楽ができたり、そんなことが可能になります!

お風呂ですよ」と「ちょっと来てもらえませんか?

この2つは何が違ったのでしょうか?

今回はこのケースも踏まえ、関わる人同士が笑顔になれる、介護を豊かにする

コミュニケーションのコツをご紹介します!

もくじ

コミュニケーションとは

単なる意思伝達の手段ではなく、相手とのつながりを深め、個人や集団の成長と幸せにつながる重要な手段です。
単純に会話するだけでなく表情やスキンシップも含まれます。

言語的コミュニケーション

言葉や文字を使った方法で、会話や筆談、手話などが含まれます。具体的な情報を伝えるのに適しています。
高齢の方は低い声で話しかけたほうが聞き取りやすい場合が多いです。

耳の中にある「有毛細胞(ゆうもうさいぼう)」という細胞が高い音を感じ取る部分から劣化していきやすく、低い音を感じ取る部分は比較的ダメージを受けにくい、ということから、そのように言われています。

そのため、たまに会話が出来ない、耳が聞こえない、と言われる方の中にも聞き取れていないだけで、耳元で響くような低い声で話しかけると、聞き取ることが出来て、実は話せたなんてことは珍しくありません。

非言語的コミュニケーション

表情、ジェスチャー、声のトーン、視線などを用いる方法で、言葉が通じにくい場合でも感情や意図を伝えることができます。

認知症を持つ方の中には、人の表情の変化にとても敏感になる場合もあります。

そういった方は険しい表情の人を見ると、気持ちが落ち着かなくなり「何かしなきゃ」と思ってしまい余計に落ち着かなくなってしまいます。

日常の何気ない小さなやりとりや表情、仕草も、良い関係の基盤、信頼関係の構築に繋がります。

良いコミュニケーションの効果

  • 安心感と満足感の提供
    信頼できる人との関わりを通じて安心感を得ることができます。特に高齢者や認知症の方は、不安や混乱を抱えやすいため、丁寧なコミュニケーションが必要になります。
  • 拒否や抵抗の軽減
    信頼関係が築けていない場合、介護を受ける側が介護を拒否したり、抵抗することがあります。これを防ぐためにも、日々のコミュニケーションを通じて相手の気持ちに寄り添うことが必要です。
  • 状態の把握
    心身の状態や日常生活のニーズを把握するためには、適切なコミュニケーションが欠かせません。
  • トラブル防止
    誤解が原因でトラブルが発生することがあります。日頃から密なコミュニケーションを取ることで、こうしたリスクを軽減できます。

コミュニケーションのコツ2選

1、細かく伝える

あるスタッフから「〇〇さんトイレで全然立てないんです」と相談されたことがあります。

そのスタッフの声かけはトイレにつくなり「立ってください」でした。

認知症に限らず加齢とともに、脳からの指令の伝達が遅くなることがあるので「立ってください」と言われてスッと立つことは難しい場合が多いんです。

このような場合は、一つひとつの動作を説明するような声をかけることで「立ってください」と言うよよりかえってスムーズにすすみます。

「足を引いてください」→「前の手すりに掴まってください」→「お辞儀しながらお尻を上げてもらってもいいですか?」・・・

など細かく行動を分けて伝える感覚です。

「立ってください」とは一言も言わずに立ってもらうこともあります。

背筋を伸ばしてもらいたい時に「上のほうをみてもらっていいですか?」と伝えるのも効果的です。

2、否定的な表現をしない

「リフレーミング」と「否定ではなく相談」を上手に活用

「リフレーミング」

リフレーミングとは、物事や状況の枠組み(フレーム)を変えて別の視点を持つことで、ネガティブな要素を肯定的なものに変えたり、新たな可能性を発見したりする思考のプロセスです。

同じ情報でも、伝え方や表現の仕方によって人の判断や行動が変わります。

簡単な例

水が半分入ったコップの例がよくあがります。

水が半分入ったコップ

水が半分入っている(ポジティブ)

水が半分しか入っていない(ネガティブ)

水が半分入っている(ニュートラル)

このように「も」や「しか」などが入るだけで感じ方がまるで変わります。

この例は自分自身の捉え方の例です。

相手の立場や状況に応じて「どのように情報を伝えるか」を考えることが大切です!

捉える側が肯定的な判断をできるようにすることが、良いコミュニケーションに繋がります。

例えばコップにお茶が半分ほど残っていて、飲んで欲しい時「まだこんなに残ってますよ」と言うより「もうこんなに飲んでくれてたんですね」と伝えた方が「飲んでほしい」と伝えなくても飲んで頂くことができたりします。

「否定ではなく相談」

相手の方に否定や命令と捉えられないような伝え方が望ましいです。いずれにしても相手の方に対し行動を促すわけですから、こちらも伝えたいことは基本的には同じことで、それをどう伝えるかという話になります。

実際の例を基に説明します。

食事を素手で食べてしまう方がいました。その方に対し「手で食べないでください」と言うと否定的です。

目の前で起きていることを解説し、否定しているだけになってしまいます。

対して、相談の場合は「スプーンで食べてみませんか?」など相手の方に質問するような形になります。

自分自身の置き換えて考えてみると更に分かりやすいかもしれません。

道端で急に「邪魔だからどいて」と急に言われたらどう思うでしょうか?

仮に自分自身が本当に邪魔な位置に立っていたとしても、このような言われ方をしたら、まず嫌な気持ちになると思います。この言い方をされて素直に要求を受け入れることは難しいと思います。

例えばですが「あのー、少しだけ右か左に移動して頂けませんか?」

と聞かれたら先ほどより受け入れやすいと思いません?

このような話しかけ方でコミュニケーションが取れたら理想的だと思います。

(注意)人による

質問に対し消極的な返答が多い方の場合には

〇〇しましょう!と断言、リードするほうが動きやすいという方もいます。

色々な声かけを試して、お互いが心地のいい日常になるようにしましょう!

おじいさんはなぜお風呂に入ってくれたのか?

お風呂ですよー

と声をかけると怒って絶対にお風呂に入ってもらえませんでした。

もし自分自身が何の前触れもなく、休んでいたり、TVを見ている時などに、急に、勝手に、他人のタイミングで、今からお風呂だと言われたら嫌だと思います。

なかなか聞き入れ難い提案です。

ちなみにその方は怒りっぽいところもありますが、スタッフを労わるような声をかけて下さったりとても優しいところもある方でした。

まず話だけでも聞いてもらえないかというつもりで言ってみました。

私「ちょっと来てもらえませんか?」

おじいさん「どうしたの?」

何かあったのかと気にかけてくれます。

少し面倒そうですが、こちらに来てくれました。

私「あの実はお風呂の用意ができたので誘おうと思いまして・・・」

おじいさん「なんだ、そんなことか」

この方は数週間お風呂に入れていませんでした。

大したことのないやり取りかもしれませんが、現場はほっとして喜びでした。

お風呂に入って気持ちよくなったおじいさんもとても良い笑顔でした。

動いてもらいやすい、伝え方。

聞き入れてもらいやすい、聞き方。

これでおじいさんはお風呂に入ってくれるようになったのだと思っています。
この声の掛け方で必ずお風呂に入ってもらえるようになりました。

長年現場で声をかけてきた経験上、コミュニケーションで解決できることもたくさんありました。

端的に伝えた方がいいこともありますが、あえて遠回りで丁寧に伝えた方が親切で伝わりやすい場合もあります。

急がば回れ」です。

声をかける側も人間ですので、常に気の利いた言い回しで声をかけることは難しいかもしれません。うまくいかないこともあるかもしれません。

ですが次はあーしよう、次はこーしようと楽しく感じる気持ちや瞬間を持ちながらコミュニケーションが取れると良いですね。

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