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【体験談】セルフケアプランの意義や作成時のポイント、メリット・注意点を解説
実際にセルフケアプランを利用してみた方やご家族から、
「自分で作るプランなんてあるとは知らなかった。もっと早く知っていれば…」
というご感想を頂くことがあります。
この記事では、介護保険が始まった2000年当初から、セルフケアプランに取り組んできた立場から、セルフケアプランの意義や作成時のポイント、メリット・注意点などを解説いたします。
セルフケアプランとは?
セルフケアプランとは、介護サービスの利用計画(ケアプラン)を、ケアマネジャーではなく自分(もしくは家族など)が主体となって作成し、事務作業や事業所との連絡調整も自分が行う方法です。
通常はケアマネジャーにお願いすることが多いケアプラン作成ですが、「自分で考えたい」「家族で決めたい」という方にとっては、一からサービスを選び組み立てられる利点があります。
また、最初はケアマネジャーに依頼していたけれどもいろいろなことがわかってきて、セルフケアプランに移行する方もいます。
ただし、いくつか注意点や陥りやすい落とし穴もあります。だからこそ、「自分のことを自分で決めたい」と強く思われる方には、挑戦していただきたい方法です。
セルフケアプランを作ろうと思ったきっかけ(体験談)
私自身がセルフケアプランに取り組むようになったのは、2000年に介護保険制度が始まった当初、義母が要介護1と認定されたことがきっかけでした。
それ以前にいわゆる寝たきりでスパゲティ状態の義父の介護を経験しており、その時に行政にある高齢者福祉、障害者福祉などの制度や民間団体やボランティアなどさまざまなサービスを選び、組み合わせて連絡調整などを行い、介護現場を回していた経験がありました。
明治生まれで自分のことをあまり語らなかった上に、経管栄養で声が出せずコミュニケーションも取りづらかった義父と違い、義母は要介護度も低く、自分の意思はっきり示す人だったので、義母がどう生きていきたいか、どう暮らしたいかを土台にいっしょにケアプランを考え、私が調整連絡や事務作業を担当すれば、自己作成はできるのではないかと思いました。
また、忙しいケアマネジャーはもっと大変な人の支援をする人で自己作成ができる人は自分でやるのがあたり前とも思っていました。
行政窓口では「素人には無理だ」と言われましたが、諦めずに挑戦してみると、想像以上に学びや発見が多かったのです。
セルフケアプランのメリット
自分や家族が主体的に関われる
自分で自分のケアプランを考えることで、自分は自分の人生だという実感をもつことができます。本人にとってはエンパワメントにつながっていると思います。
また家族も、じっくり話し合って「本人がこの先どう暮らしたいか」を深めて考えることで、大切な人の人生を支える実感をもつことができます。
つまり本人や家族の意欲や自信が湧き、より前向きな暮らしを送るきっかけになります。
介護保険制度を理解できる
介護保険制度とはどんなものなのか、どうしてこういう金額になるのか、などがとてもよくわかるようになります。
そして、制度をどう活用すればいいか深く考えられるようになります。
ケアマネジャーの負担軽減
「もっと重い要介護度の方こそ、ケアマネジャーのサポートが必要」と考え、自分たちでやってみようとする方も少なくありません。
ケアマネジャーの仕事を軽減し、必要なところに力を注いでもらいやすくなるという考え方です。
介護保険制度以外の地域資源にも目を向けられるようになる
介護保険制度だけでなく地域にある資源を活用しようと、広い目で地域を見ることにつながり、地域づくりへの意識が高くなります。
セルフケアプランの壁
行政窓口
ほとんどの自治体のパンフレットでセルフケアプランについて触れられておらず、文言があってもほんの一行だったり市民への周知には消極的で、実践者はとても少ないのが現状です。窓口で断られることも多いようです。
介護保険制度で認められているわけですから、根気強く説明をして理解を得ること、実践後もきちん行って信頼関係を築くことが大切です。
サービス事業所
サービス事業所も利用者との間にケアマネジャーを挟むというやり方に慣れているので、利用者と直接連絡を取り合うことに不安をもち、後ろ向きの対応を受けることも多いようです。でも透明性をもって真摯に実践し信頼関係を築いていくことが大切です。
信頼関係が構築されると大変頼もしい存在になります。
制度の複雑化
2000年に発足した介護保険制度は、改正のたびに複雑化の一途をたどっています。
これをすべて理解することは至難の業だと思いますが、自分が使っているサービス関連のことは理解することが必要です。
ケアプランを作るときに気をつけたいこと
ケアプランは本人のもの
ケアプランは利用者本人のもの。本人が主体であることを忘れないようにしましょう。本人がどのように暮らしていきたいのか、何がしたいのか、それをめざすのがケアプランです。
家族がかかわる場合はその点に留意して、本人の立てた目標に沿うようにしてください。
自分で自分のケアプランを立てる場合も家族など周囲とのバランスを考えることは大切です。
ただ、重介護だったり認知症で自分の意思を表すことが困難な場合、本人がどう暮らしたいのかがわからない場合もあります。
そうした場合を想定して、全国マイケアプラン・ネットワークでは、元気なうちから自分を書き留めておく『マイライフプランの玉手箱』というツールを作成しました。
ホームページから購入することができるので、よかったら手に取ってみてください。
情報収集を怠らない
サービスの情報収集や手続きは、ケアマネジャーに依頼するよりも時間と労力がかかります。情報は向こうからはやってきませんから、地域包括支援センターに相談したり、自分なりに調べたり、周りの人の体験談やアドバイスを聞いたりしながら進める必要があります。
ちなみに、地域包括支援センターはセルフケアプランについての相談にも乗ってくれるはずです。
また、制度は3年に1回改正がありますから、改正がある年には特にアンテナを張って情報を得るようにしましょう。制度改正に関しては、自治体や使っているサービス事業所に積極的に聞きましょう
チーム全体が同じ方向を向くようにする
本人、家族や親せき、サービス事業所、かかりつけ医、かかりつけ薬剤師、地域包括支援センター、行政など、かかわるチームが信頼関係で結ばれて同じ方向を向くようにすることはとても大切です。
ケアプラン作成時や変更した際には、集まってもらって方向性を共有する場をもつのが理想です。
情報共有のためにLINEグループなどを活用してもいいと思います。
必要に応じてプロの力を借りる
セルフケアプランだからといって、全てを孤立してやる必要はありません。迷った時やわからないことは地域包括支援センターやサービス事業所にどんどん相談してください。
また自分でやり始めたものの、「やはり大変すぎる」「状況が変わってしまった」といった場合には、ケアマネジャーを探して引き継いでもいいと思います。
全国マイケアプラン・ネットワークでは、頭の中に雑多に放り込まれている情報を整理して、ケアプランを考える過程が誰にでもわかってもらうためのツールとして、『あたまの整理箱』という冊子をつくりました。ホームページからご注文いただけるので、よかったらご覧になってください。
『あたまの整理箱』に掲載されているケアプランを考える際の心得です。参考にしてください
マイケアプランのためにやらなくてはいけないこと
自分を知る
- 自分のこれまで歩いてきた道を振り返る
- 自分のこれからの生き方と暮らしを考える
- 周りの人の生き方と暮らしを考える
- 周りの人とわかり合う
地域を知る
- 隣近所を知る
- 地域にある制度を知る
- 地域にある資源を知る
介護保険制度を知る
- 介護保険制度の理念を知る
- 介護保険の仕組みを知る
- 介護保険制度で提供されるサービスの中身を知る
ケアプランを立てるコツ
最初から完璧なものをつくろうと思わない
最初に考えたケアプランは机上で考えたもの。実際にうまくいくかは暮らしてみなければわかりません。ケアプランは毎月更新ですから、具合の悪いところがある場合や状況の変わった場合は翌月手直しすればいいのです。
ケアプランは進化させるものです。
はじめは自分にとって必要最低限のサービス利用からはじめる
サービスを使うことは助かることもある反面、暮らしを変えることでもあります。新しいスタッフと知り合ったりこれまで行ったことのない場所に行ったり、本人にとってはストレスでもあります。
はじめから飛ばすと疲れます。頭で考えて物足りないくらいからはじめてください。
本当に足りなければ慣れるにつれて増やしていけばいいのです。
みんなで考える
ケアプランはみんなで考えるもの。
人と人を結ぶものでもあります。一人で考えるのではなく、みんなのあたまと手を借りましょう。
ケアプランの見えない生活が送れたら大成功
ケアプランに振り回される生活ではなく、自分の生活リズムにケアプランを合わせていきましょう。
陥りやすい落とし穴
お買い物ゲームになってしまう
利用限度額の範囲内でうまく効率よくサービスを組み入れることは大切ですが、限度額があまっているからといって、いらないサービスまで入れるのは本末転倒。
暮らしがきつくなる要因でもあります。必要なものだけ考えましょう。
ジグソーパズルになってしまう
時間が空いていると、そこにサービスを組み込みたくなるかもしれません。
それで自分は疲れないのか、考えてみましょう。
自分の生活リズムを大切にしましょう。
殻をつくってしまう
自分ひとりで考えると、どんどん視野が狭くなってしまいます。
周りの人の知恵や助けを借りると、思いがけない道が開けることがあります。
殻をつくらずにいろいろな人からアドバイスを受けやすいようにしましょう。
私たちは、一人ひとり名前を持っています。そして一人ひとり違う人生を送ってきました。
当然、介護保険を利用するようになっても、一人ひとり違う人生を送っていきます。
だから、ケアプランも一人ひとり違うはずです。
マイケアプランはこれまで送ってきた、自分らしい生き方の継続のためにあります。
できたケアプランをチェックしてみましょう
- そのケアプランで、あなたも周りの人も元気になれそうですか?
- 意味のないサービスはありませんか?
- 無駄遣いはありませんか?
- そのケアプランで疲れませんか?
- 自分の力が発揮できていますか?
- ケアプランは毎月更新。今月のプランでよくなかったら来月変更しましょう。
ケアマネジャーに依頼する場合との違い
ケアマネジャーにお願いすると、サービスの調整や事業所との連絡を行ってもらえるため、利用者や家族の負担は軽減されます。
ただし、「どんなサービスを選んだか分からない」「いつの間にかプランが決まっていた」ということが起きやすいのも事実です。
ケアマネジャーにお願いする場合は決して丸投げせずに、自分がどう暮らしたいのか、何がしたいのか、何に困っているのか、要望などなどをきちんと伝えて、主体的に暮らしを組み立てる姿勢をもち、サービスも事業所もできれば見学もしたうえで自分で選びましょう。
セルフケアプランであれば、利用者や家族がサービスや事業所選びの主体という実感をもつことができます。一方で、専門家のアドバイスを受けにくい態勢をつくってしまうと孤立しがちなので、注意が必要です。
また、全ての連絡・手配・調整をする必要があるため、手間や時間はかかります。
どちらが自分に合っているか、状況や希望によって考えてみましょう。
全国マイケアプラン・ネットワークのご紹介
全国マイケアプラン・ネットワーク立ち上げのきっかけは代表の島村が2000年10月に朝日新聞に投稿した記事でした。記事への賛同者が集まり2001年9月に任意団体として発足しました。
当初は「セルフケアプラン実践者が情報共有できる場」であり、「セルフケアプランの道をつくる」ことを目標にしていました。
しかし今は、セルフケアプランであれケアマネジャーに依頼する場合であれ、「利用者が主体的に関わる大切さ=マイケアプラン」を伝えることに力を入れるようになっています。
活動
出前講座…依頼に応じて、マイケアプランという考え方を伝えています。
ワークショップ…マイケアプランを体感してもらうワークショップを開いています。
マイケアカフェ…一般の人にはなかなか届かない高齢社会や介護に関わる話題についての勉強会を開いています。
国への提言…制度の改正のたびに一般市民の視点から提言などを行っています。
調査研究…セルフケアプランに関する調査研究を行っています。
制作物
『あたまの整理箱』
ケアプランを考えるときに情報を整理して根拠のあるケアプランにつながるようにするワークシートです。チームが方向性を一つにするためのツールともなります。(500円)
『マイライフプランの玉手箱』
介護が必要になる前に自分を伝えておくためのツールです。(500円)
自己作成支援ソフト「とき」
セルフケアプランの際に行う面倒な計算をやってくれて書類をつくってくれるソフトです。(無料)
まとめ
「セルフケアプラン」という選択肢があることは、広くは知られていません。しかし、実際に取り組んでみると、自分の状況や願い、介護サービスについて深く理解できるきっかけになり経験者の満足度は非常に高いです。
もちろん、行政窓口との折衝や情報収集などの苦労はありますが、それでも「自分で考え、自分で組み立てる」意義は大きいと実感しています。
もし「自分の人生を自分で決めたい」「ケアプランづくりにも関わりたい」と思われた方は、一度セルフケアプランの作成を検討してみてはいかがでしょうか。必要に応じて専門家に相談しながら、一緒に新しい道を切り拓いていただければ幸いです。
ホームページ
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