ケアマネジャーがいなければ、介護保険が受けられないと思っていませんか。それは誤解です。
実はケアマネジャーがいなくても、利用者や家族が市区町村の介護保険課に書類を提出すれば、介護保険で介護事業者や福祉用具貸与事業所のサービスが受けられます。
この記事では、末期がんの妹を自宅で看取った私が、2023年11月から2024年2月までセルフケアプランを行った経験を紹介します。
ケアマネジャーと利用者の間に生まれた温度差
私の妹は乳がんの末期で、2023年5月から在宅介護に入りました。
その際、大学病院で訪問医師、訪問看護師、そしてケアマネジャーを紹介してもらったのです。
自分流が確立しているケアマネジャーの提案に対する違和感
そのケアマネジャーは、ベテランで経験も豊富。頼りになる一方で、キャリアがあるからこそ自分流のノウハウが確立している。
そして懇意にしている介護サービス事業所あり、そこが提供できる範囲のサービスプランを提案してくる節がありました。
最初は小さな「あれ? お願いしたサービスと少し違うかも」が、次第に「もしかしてこのケアマネジャーは、自分が受け持つ利用者に同じプランを提案している? 」と思うようになりました。
と、同時にケアマネジャーとの間に、ケアプランに対しての温度差も感じ始めていました。
ケアマネジャーに違和感を覚えたら変えることも可能
ケアマネジャーが少しでも違うなと感じたらチェンジが可能です。という大前提はありますが、サービスを利用している利用者は、自宅はもちろん、個人情報もほとんど開示しているため、正直、「変えます」というのにも抵抗や恐怖があります。
また新しいケアマネジャーを探すのも、どうやって探していいのかわかりません。
「セルフケアプラン」を作ることでケアマネジャーは不要になる
そんな事情を訪問看護師に相談したところ「居宅サービス計画」の自己作成(セルフケアプラン)について教えてもらいました。
利用者または家族がサービス事業所や福祉用具貸与事業所との調整を行い、点数を計算して、介護保険課に書類を提出すれば、ケアマネジャーは不要とのこと。
ケアマネジャーの仕事を利用者または家族が代行する
簡単に言うと、ケアマネジャーの仕事を、利用者または家族が代行するのです。これは厚生労働省でも認めている制度だそうです。
介護保険はケアマネジャーがいないと受けられないと思っていた私にとって、目からウロコがボロボロ落ちました。そして早速、自己作成(セルフケアプラン)に切り替えるべく行動を起こしました。
セルフケアプランは市区町村の介護保険課が担当
最初に地域包括支援センターで相談したのですが、「私どもは「居宅サービス計画」の自己作成は推奨していません」と一言。
地域包括支援センターで介護保険課の担当者を繋いでもらう
「ケアマネジャーが合わないことはよくあります。ほかの方を紹介します」と説明されましが、そのケアマネジャーが私たちと相性がいいとは限りません。また合わなかった場合、個人情報を開示後に断るとなると、リスクが大きすぎる。
やはりそれは違うなと思い、「推奨していなくても構いません。とりあえず、市区町村の介護保険課の担当者を紹介してください」とお願いし、担当者と繋いでもらいました。
セルフケアプランの作成に必要な書類と提出手順の説明を受ける
市区町村の介護保険課では色々と事情を聞かれましたが、結局「わかりました」と了承をもらい、「居宅サービス計画」の自己作成(セルフケアプラン)に必要な書類を一式と、書類提出の手順などの説明を受け、セルプケアプランがスタートしました。
居宅サービス計画の自己作成(セルフケアプラン)とは
ここで介護保険のサービスを受ける際、一般的にはどんな手順で進むのかを紹介します。
- ケアマネジャーを選び契約する
- ケアマネジャーが利用者の希望をヒアリングする
- ケアマネジャーが利用者の希望に合わせてケアプランを作成する
- ケアマネジャーがサービス事業者や福祉用具貸与事業所の調整を行う
- サービス事業者や福祉用具貸与事業所と利用者が契約する
- 利用者がサービス開始
- ケアマネジャーが介護保険サービスの申請書類を介護保険課へ提出する
順序は多少前後するものの、一般的にはこのような手順で進みます。この間に、担当者会議なども入ってきます。
居宅サービス計画の自己作成(セルフケアプラン)は、上記の“ケアマネジャー”が行う部分を、利用者や家族がかわりに行うのです。
私はこのセルフケアプランを2023年11月から2024年2月まで実際に行っていました。
セルフケアプランのメリットとデメリット
実際に行った私が感じた、居宅サービス計画の自己作成(セルフケアプラン)のメリットとデメリットを挙げてみました。
セルフケアプランのメリット
- ケアマネジャーを探さなくていい
- ほぼ希望にそったケアプランが作成できる
- 介護保険制度や介護サービス、医療関係などの専門知識が身につく
- 個人情報をケアマネジャーに開示する必要がない
- モニタリング、担当者会議は利用者や家族主導のため、スケジュールの調整がしやすい
- 直接市区町村の担当者とやりとりするので、介護保険の正しい情報が入手できる
セルフケアプランのデメリット
- サービス事業所を探して、サービス提供の交渉をしなければいけない
- サービス担当者会議の議事進行を行わなければならない
- 介護保険の点数や、サービス事業所のコードなどを確認しなければいけない
- 市区町村、介護サービス事業所によってはセルフケアプランが認知されていないところもある
- 月に2度、市区町村の介護保険課に書類提出が必要
- どんなサービスを利用するべきなのか、相談できる人がいない
メリット、デメリットどちらもありますが、私にはとってはデメリットよりもセルフケアプランを行うメリットの方が大きかったのが感想です。
自己作成(セルフケアプラン)を行った結果
居宅サービス計画の自己作成(セルフケアプラン)を行おうと最初に思ったとき、私は訪問ドクター、訪問看護師、訪問薬剤師など、周辺の方々に相談しました。
そしてすべての関係機関から、承認を受けた後に行動を始めました。
さらに市区町村の介護保険課にも、最初から「居宅サービス計画の自己作成(セルフケアプラン)を行う」という前提ではなく、「居宅サービス計画の自己作成(セルフケアプラン)とはどういうものか?」の説明を聞き、「これならできる」と確信してから、「居宅サービス計画の自己作成(セルフプラン)を開始します」という手順を踏みました。
セルフケアプランに途中挫折しても、介護保険を受けられなくなるわけではない
そして私の背中を押してくれたのは、介護保険課の担当者の「もし居宅サービス計画の自己作成(セルフケアプラン)開始後、難しいと思ったらいつでもケアマネジャーを紹介できるので言ってくださいね」という言葉です。
仮に途中で「無理」となっても、介護保険が受けられなくなることはないとわかったのは大きかったです。
セルフケアプランは難しくない
セルフケアプランはあまり認知されていない、情報が少ない。
しかもハードルも高そうに思いますが、周囲の機関や、市区町村の介護保険課の担当者とコミュニケーションをとりながら進めれば、それほど難しくはないというのが私の率直な感想です。
ケアマネジャーが担当できる利用者には限りがあり、優秀な方は手一杯
現在の介護保険制度では、ケアマネジャーが担当できる利用者の人数は35人。
優秀なケアマネジャーはすでに口コミで限度人数いっぱいで、なかなか新しい利用者を受け入れるのは難しいのが現状です。
またケアマネジャーの有料化も、介護保険制度の改定が行われる度に議題にあがっています。そんなことを鑑みても、居宅サービス計画の自己作成(セルフケアプラン)、実際に行うか、行わないかは別にしてもこのような制度があることは知っておいた方が良いのではないではないでしょうか。