最近、「なんとなく味が薄く感じる」「何を食べても美味しくない気がする」そんな変化を感じていませんか?
年齢のせいかな?疲れているだけかな?と見過ごしてしまいがちですが、味覚の変化は食事量の低下につながることがあります。
特に高齢の方では、加齢そのものに加えて、服用している薬の影響や口の乾燥、栄養状態の変化など、さまざまな要因が重なり、「味を感じにくい」という状態が起こりやすくなります。
本コラムでは、栄養管理の視点から、“味を感じにくくなったとき”にできる食事の工夫についてご紹介します。
味覚の変化とは? ― なぜ「味がしない」と感じるの? ―
味覚は、加齢・薬の副作用・体調の変化・口の乾燥などによって変化することがあります。
特に高齢者では、次のようなことが影響し、味を感じにくくなることがあります。
- 味蕾(みらい:味を感じる細胞)の減少
- 唾液分泌の低下
- 嗅覚の低下
どんな人に起こりやすいの?
味覚の変化は、以下のような方に起こりやすいとされています。
- 高齢の方
- 口の乾燥が強い方
- 風邪や感染症のあと
- 亜鉛不足がある方
- 食欲が低下している方
- 複数の薬を服用している方
味がしない状態が続くと…
- 食事量が減る
- 好きだった食べ物を避ける
- 塩分を強くしてしまう
といった影響が出やすく、結果として低栄養や塩分過多につながることもあります。
味が感じにくい時の食事の工夫

味覚が低下しているときは、「味」だけに頼らず、香り・食感・温度・彩りを活かすことがポイントです。
香りを活かす
嗅覚は味覚と深く関係しています。香りを強めることで、食事の満足感が高まります。
- だしをしっかり効かせる
(例:みそ汁を作る際に、かつお節や昆布でとっただしをしっかり効かせることで、うま味の広がりを感じやすくする) - 香味野菜(ごま、しょうが、しそなど)を使う
(例:炊き込みご飯にしょうがを加え、風味を感じやすくする)
酸味を活用する
- 酢
(例:鶏肉の煮物に少量の黒酢を加えることで、まろやかな酸味とコクを加える) - レモン
(例:焼き魚にレモンをひと絞りすることで、香りと酸味が加わり、味を感じやすくする)
温度差をつける
温かいものは温かく、冷たいものは冷たく。食べる直前に温めたり冷蔵庫から出すことで、温度差をはっきりさせ、味を感じやすくなります。
食感や彩りに変化をつける
- 視覚からの刺激
(例:赤・黄・緑の食材を意識して盛り付け、目で見て「美味しそう!」と感じる工夫をする) - 食感のアクセント
(例:柔らかいおかずの中に、カリッとしたナッツや、シャキシャキとした野菜を少し混ぜることで、噛む楽しみを増やす)
味覚と深く関わる「亜鉛不足」
味を感じる細胞(味蕾)は、約10日ほどで新しく生まれ変わるといわれています。その働きを支えているのが、亜鉛というミネラルです。
亜鉛が不足すると、味蕾の再生がうまくいかず、味を感じにくくなることがあります。
特に高齢者では、次のような理由から知らないうちに亜鉛が不足していることがあります。
- 食事量の減少
- 肉や魚の摂取量の低下
- 消化吸収機能の低下
亜鉛を多く含む食品
日頃の食事から、亜鉛を意識して取り入れることが大切です。
- 牡蠣
- 牛肉、豚レバー、鶏肉
- 卵、チーズ
- 大豆製品(豆腐・納豆など)
- ナッツ類

とくに「肉・魚・卵・大豆製品」などは、亜鉛を含むと同時に良質なたんぱく質の摂取にもつながります。味覚の低下を感じると食事量が減りやすくなりますが、少量でもこれらの食品を意識的に取り入れることが重要です。
改善しない場合は医療機関へ
食事を工夫しても味覚の変化が続く場合や、急に味を感じなくなった場合は、自己判断せず医療機関へ相談しましょう。
医療機関では、以下のような確認を行い、必要に応じて亜鉛製剤の処方が検討されることもあります。
- 血液検査での亜鉛値の確認
- 貧血や炎症の有無
- 服薬状況の確認
※亜鉛は過剰摂取による副作用もあるため、自己判断でサプリメントを大量に摂取することは避けるようにしましょう。
まとめ
「味がしない」「何を食べても美味しくない」と感じると、食事が楽しくなくなり、栄養不足につながることがあります。
しかし、香り・食感・温度・彩りを工夫することで、食事の満足感は高められます。
症状が長く続く場合や急激に変化した場合は、医師や管理栄養士に相談することが大切です。食事は、体をつくるだけでなく、生活の楽しみでもあります。小さな工夫を重ねながら、「食べる喜び」を守っていきましょう。

