「食事中にむせやすくなった」その原因と対策について管理栄養士が解説

昔はスムーズに食事ができていたのに、最近「むせやすくなった」「食べ物を飲み込みにくくなった」など、お悩みを抱える高齢者は少なくありません。

むせこみやすさは、低栄養や誤嚥性肺炎のリスクが高くなるため、対策が必要です。

もくじ

食事中になぜむせるのか?食塊の仕組みと

私達は、食べ物を口に入れると、噛み砕いて唾液と混ぜ合わり、やがて、やわらかく飲み込みやすい形態(これを食塊(しょっかい)といいます)となります。この食塊はのどの奥から食道⇒胃へと送り込まれます。

一方、のどの奥には「気管」という空気の入り口があり、食べ物の通り道である食道の入り口と隣り合っています。

誤嚥とは食べ物が食道にうまく入らず気管に入りそうになること

普段、私達が息をしている時は、食道の入り口のふたがしまり、気管の入り口があいています。食べ物がのどに送られると、その刺激で、気道の入り口が閉まり、食道に送られるのです。

しかし、この時、食べ物が食道にうまく入っていかないと、誤って「気管」に入りそうになってしまいます(「誤嚥」といいます)。私達は誤嚥しそうになると、せき反射がおこり、この反射が「むせ」として認識されるのです。

食べ物が誤って気管に入ると窒息のリスクが

もしも食べ物が誤って気管に入り、空気の通り道を塞いでしまうと、窒息してしまいます。そのまま奥の肺まで流れて行ってしまうと、誤嚥性肺炎になってしまいます。

令和3年人口動態調査(厚生労働省)によると、 65歳以上で窒息による死亡は3,884人で、交通事故2,150人の約1.8倍と報告されています。

むせやすい人の特徴(食べ方と身体的変化)

むせやすい人の特徴は、長年の習慣や生活スタイルにより「食べ方」に問題がある場合と、加齢に伴う「身体機能の低下」によるものがあります。

食べ方の特徴

  • よく噛まない
  • 急ぎ食べをしてしまう
  • 食事に集中していない

身体的変化

  • 唾液の減少
  • 噛む力の衰え
  • 咀嚼する力が低下している(入れ歯の不具合など)
  • 疾患や処方薬の副作用で嚥下機能が低下している
  • 筋肉量が低下し姿勢を維持できない

1つでも該当する項目があれば注意が必要です。ご家庭やご自身で解決が難しい項目は、かかりつけの先生や歯医者さんに相談をしましょう。

むせない為の対策

むせたり、のどにつまりやすい食感の食材
むせたり、のどにつまりやすい食感の食材

むせや誤嚥を防ぐために、むせやすい、のどにつまりやすい食べ物と飲み込みやすくするポイントを紹介します。

ふだんの食事にひと工夫を加える

飲み込みやすくするポイント
飲み込みやすくするポイント

食べるものをはじめから変えるのではなく、例えば食パンだったら牛乳に浸しながらでもよいですし、フレンチトーストにアレンジするのもおすすめです。

チャーハンなどばらけやすいものは、あんかけチャーハンにするとまとまり易くなります。

まとめ

今まで問題なく食べなれていた料理や食材でも、年齢とともに食べにくくなってしまう事も少なくありません。

しかし、その原因と対策を知っておくことで、すぐにペースト食にするのではなく段階的に食事の形態を調整することができ、誤嚥を予防することができます。

また見た目も普段と変わらない食事を継続することで、食べる喜びを感じ、生きる力にも繋がります。 むせこみにくい、食べやすい事も大切ですが、何より楽しみながら食事できるような工夫をしていく事を大切にしていただければと思います。

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この記事を書いた人

2012年、管理栄養士免許取得。
病院、透析クリニック、等で経験を積み、2021年在宅訪問管理栄養士の資格を取得。現在、フリーランスに転身し、在宅での訪問栄養食事指導の他、企業やクリニックで生活習慣病を含めた慢性疾患に対する栄養相談・指導も行っている。

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