オンライン服薬指導とは?訪問薬剤師が解説するメリットや利用の流れ

オンライン服薬指導とは、薬剤師がパソコンやスマートフォン、タブレットなどを使ってビデオ通話や専用アプリを通じて行う、薬の使い方や注意点についての説明サービスです。

これにより、患者さんは薬局を訪れることなく、自宅で薬剤師から指導を受けることができます。

前回は、「訪問薬局」について解説しましたが、本日は、「オンライン服薬指導」について訪問薬剤師が解説します。

もくじ

オンライン服薬指導の普及が進んだ背景

オンライン服薬指導は、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに注目され、現在では多くの薬局で利用できるようになりました。

日本保険薬局協会の調査によると、2023年2月時点で全国の薬局の約8割がこのサービスを導入しているとのことです。

オンライン服薬指導の普及が進んだ背景には、災害や感染症時に薬局がしっかり機能を果たすため、国が推進している「連携強化加算」の要件に、オンライン対応が追加されたことが大きく関わっています。国も災害対策やデジタル化を進める一環として、このサービスの活用を推奨しています。

  • パソコンやスマートフォン等を使った薬剤師による服薬指導。
  • 対象者:オンライン診療や在宅医療を受けた患者。

オンライン服薬指導のメリット

オンライン服薬指導は、以下のメリットがあります。

  1. 時間と手間の節約: 薬局に行く必要がないため、忙しい方や移動が難しい方にも便利です。
  2. 感染リスクの低減: 対面接触を避けることで、感染症のリスクを減らせます。
  3. どこに住んでいても利用可能: 地方や遠隔地に住んでいる方でも、専門的な指導を受けられます。
  4. プライバシーの確保: 自宅で服薬指導を受けるため、他の人の目を気にする必要がありません。

オンライン服薬指導のデメリット

一方で、以下のデメリットもあります。

  1. 画面越しのコミュニケーションの難しさ:表情や反応が伝わりにくいことがあります。
  2. 技術的な問題: インターネット環境や機器の操作に慣れていないと、利用が難しい場合があります。
  3. 配送に時間と料金がかかる:薬の受け取りに配送料や日数が必要な場合があります。

オンライン服薬指導の対象者

オンライン服薬指導は、薬剤師が患者さんの状態を確認したうえで行います。基本的には、以下のような方が対象になります。

  • 症状が安定していて、継続的に処方を受けている患者さん
  • 交通手段が限られている地域に住む患者さん
  • 体調不良や病状、怪我、障害で薬局に行くのが難しい患者さん
  • 仕事などで薬局に立ち寄る時間が取れないビジネスパーソン

これにより、患者さんの生活スタイルや健康状態に合わせた柔軟なサービスが提供可能です。

オンライン服薬指導が対象外の処方

一方で、以下のような処方はオンライン服薬指導の対象外となり、対面での指導が必要です。

1.麻薬や向精神薬の処方

管理が厳しく、オンラインでの対応が認められていません。

2.基礎疾患等の情報が把握できていない場合の処方

  • 抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、不整脈用剤など、特別な注意が必要な薬
  • 精神神経用剤、糖尿病用剤、抗HIV薬など、使用にリスクが伴う薬
  • 8日分以上の処方が必要な場合(基礎疾患の情報が不十分な場合)

患者さんの状態を十分に把握できていない場合は、慎重に対面指導が求められます。

3.医師や薬剤師の判断で対面が必要とされる場合

たとえば、オンライン指導では十分な情報提供や確認が難しいケースなど。

これらの条件をしっかり把握することで、安全かつ適切な服薬指導を受けられます。また、オンライン対応が難しい場合でも、薬局や訪問薬剤師のサポートを受けられる体制が整っています。

オンライン服薬指導を利用するには

オンライン服薬指導は、以下の流れで行われます。

STEP
医師の診察

病院やクリニックで対面診療を受けるか、オンライン診察を受けます。

STEP
処方箋の発行

オンライン服薬指導に対応した処方箋をもらいます。

STEP
薬局を選ぶ

オンライン服薬指導に対応している薬局を探し、連絡します。

STEP
アプリの準備

指定されたアプリをダウンロードし、服薬指導の予約をします。

STEP
オンライン服薬指導

指定された日時に薬剤師とオンラインでつながり、説明を受けます。

STEP
薬の受け取り

自宅や施設への配送、または薬局での受け取りを選べます(別途、配送料がかかります)。

訪問薬局との使い分け

訪問薬局は、薬剤師が患者の自宅や施設を訪問して服薬指導を行うサービスです。

オンライン服薬指導と訪問薬局は、それぞれの特徴を活かして使い分けることが重要です。

  • オンライン服薬指導が適している場合
    • インターネット環境が整っている
    • 対面接触を避けたい
    • 時間を効率的に使いたい
  • 訪問薬局が適している場合
    • 薬剤師の直接的なサポートが必要
    • 麻薬や注射薬など特別な管理が必要な場合
    • 緊急対応が求められる場合
    • オンラインシステムの利用が技術的に難しい

オンライン服薬指導と訪問薬剤師サービスをうまく活用することで、一人ひとりに合った最適な薬の提供が可能になります。

【参考文献】

総務省発表「令和4年情報通信白書

オンライン診療の適切な実施に関する指針(令和4年2月 28 日 第 86 回社会保障審議会医療部会)

厚生労働省ホームページ「オンライン診療について 国民・患者の皆様へ

2023年3月 日本保険薬局協会管理薬剤師アンケート報告書

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この記事を書いた人

広島県呉市出身。東京都町田市にある薬学部に進学し、神奈川県相模原市の調剤薬局に5年間勤務。在宅医療を経験。
その後、人材紹介業に転職して6年間勤務、役員を経験後、自ら開業して4年間働く。
結婚を機に東京都目黒区にある訪問薬局に就職して管理薬剤師として10年間勤務。
その後東京都港区の訪問薬局の立ち上げを2年間請け負い、2025年1月に東京都目黒区下目黒に「サンロクゴ訪問薬局目黒店」を開業。
医療用麻薬や衛生材料を備蓄、クリーンベンチを設置して城南エリアの在宅医療を受ける患者に対して医薬品供給と薬学的管理、24時間365日の緊急対応などを実施している。
目黒区薬剤師会理事、HIP研究会理事、全国薬剤師在宅療養支援連絡会(J-HOP)評議員

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