糖尿病と聞くと、「甘いものを控える」「食事量を減らす」といったイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、高齢者の糖尿病治療では、血糖値を下げることだけでなく、低栄養や筋力低下を防ぐことも大切です。無理な食事制限ではなく、必要な栄養をしっかり摂りながら血糖値の管理をすることが治療の基本となります。
本コラムでは、高齢者の糖尿病の特徴と食事のポイントに加え、低血糖や活動量についても解説します。

高齢者の糖尿病の特徴
高齢者の糖尿病には、「高齢になってから糖尿病を発症した方」と、「若い頃から糖尿病を治療してきた方」の両方が含まれます。
- 高齢になってから発症した場合: 加齢による筋肉量の減少や運動不足、体重増加などが影響していることが少なくありません。
- 長年糖尿病を患っている場合: 糖尿病の3大合併症である「網膜症」「腎症」「神経障害」を合併している場合があります。
発症した時期やこれまでの経過によって特徴は異なりますが、高齢者の場合は糖尿病そのものだけでなく、加齢による身体機能や栄養状態の変化にも注意が必要です。
食事で気をつけたい3つのポイント
① 欠食しない
「血糖値が高いから」と食事を抜いてしまうと、必要な栄養素が不足するだけでなく、次の食事で血糖値が急上昇しやすくなります。また、高齢者では食事量の減少が低栄養や筋力低下につながることもあります。
朝・昼・夕の3食を基本に、できるだけ規則正しく食べることを心がけましょう。
② 主食・主菜・副菜をそろえる
糖尿病の食事というと、ご飯やパンなどの主食を減らすイメージを持たれる方もいますが、極端な制限はおすすめできません。
次の3つを組み合わせることで、必要な栄養素をバランスよく摂ることができます。
- 主食: ご飯・パン・麺類
- 主菜: 肉・魚・卵・大豆製品
- 副菜: 野菜・きのこ・海藻類

毎食すべてを完璧にそろえる必要はありませんが、「主食・主菜・副菜」を意識することが健康的な食事の第一歩です。
③ たんぱく質をしっかり摂る
高齢になると筋肉量が減少しやすくなります。筋肉は体を動かすだけでなく、血糖値の調節にも関わる大切な組織です。
肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などのたんぱく質を毎食取り入れることで、筋肉量の維持や低栄養の予防につながります。
特に食事量が減りやすい高齢者では、「何を減らすか」ではなく、「たんぱく質をしっかり摂れているか」を意識することが大切です。
ただし、腎機能が低下している方は、たんぱく質の摂取量について医師の指示に従ってください。

高齢者に起こりやすい低血糖について
糖尿病というと血糖値が高い状態をイメージしがちですが、高齢者では血糖値が下がりすぎる「低血糖」にも注意が必要です。
低血糖とは、血糖値が必要以上に低くなった状態のことで、食事量が少ない時や食事を抜いた時、糖尿病の薬が効きすぎた時などに起こることがあります。
低血糖の主な症状
- 冷や汗が出る
- 手が震える
- 動悸がする
- 強い空腹感がある

しかし、高齢者ではこれらの自覚症状が乏しいケースも少なくありません。そのため、低血糖に気づくのが遅れ、転倒や骨折につながると、日常生活に大きな影響を及ぼす場合があります。
低血糖を予防するために
低血糖を予防するためには、食事を抜かずに規則正しく食べることが大切です。
高齢者の糖尿病治療では、血糖値を下げることだけでなく、低血糖を起こさないことも重要な目標のひとつです。
無理なく活動量を維持、もしくは増やしましょう
運動は食事と並んで、糖尿病治療の基本のひとつです。体を動かすことで筋肉がブドウ糖を利用しやすくなり、血糖値の改善につながります。
しかし、高齢者の場合は無理な運動を行う必要はありません。まずは日常生活の中で活動量を増やすことから始めましょう。
■ 日常生活で活動量を増やす例
- 買い物や散歩に出かける
- エレベーターではなく階段を使う
- 家事や庭仕事を行う
- テレビを見ながら足踏みや体操をする

また、活動量を増やすことは血糖管理だけでなく、筋肉量の維持やフレイル予防にもつながります。
まとめ
高齢者の糖尿病では、血糖値を下げることだけを目的とした厳しい食事制限ではなく、低栄養や筋力低下を防ぎながら健康を維持することが大切です。
食事量が減った時や、体重の変化、低血糖が気になる時は、自己判断で食事や薬を調整せず、早めに医師や管理栄養士に相談しましょう。

